新宿副都心の「新宿三井ビルディング」 長周期地震動の揺れを半減、屋上に超大型制震装置(TMD)を設置!
-新宿三井ビルディング-
日本が他の国と比べて圧倒的に不利なのは地震の多発地帯にある事です。これは逃れようが無く、世界との都市間競争においてもスタート時点で大きなハンデを背負っている事になります。
大規模オフィスビルにとって何よりも重要なのは、人命を守ると共に大規模災害時の「BCP(事業継続計画)」を確立する事です。
アジア各国に競合都市が出現する中で、「BCP(事業継続計画)」が確立されえていないと外資系企業を中心に日本を離れ、東京は国際都市から脱落します。
私は東日本大震災以降、ビルの概要の中でも特に地震対策に興味を持つようになりました。そのためメインの「超高層ビルとパソコンの歴史」のデータベースにも「地震対策」の項目を設けました。
そんな中で昨日、日本の技術力はやっぱり凄い!と感心するニュースがありました。三井不動産が鹿島建設の施工により「新宿三井ビルディング」において、長周期地震動が発生した場合の揺れを大幅に低減させるため、超大型制震装置「TMD(チューンド・マス・ダンパー)」を屋上に設置するというニュースです。
三井不動産・ニュースリリース(2013/07/29)
「新宿三井ビルディング」で長周期地震動の揺れを半減 日本初 屋上に超大型制震装置(約1,800t)を設置
技術的にこんなことが可能なのか!と感動しました。「TMD」、「AMD」、「ATMD」を設置した超高層ビルは結構ありますが、いずれも新築時に最上階付近に組み込みます。
既存の超高層ビルに設置が可能なんて私は夢にも思っていませんでした。もちろん日本で初めてで、世界でも例がないようです。
更に、低層階コア部に高性能オイルダンパー(HiDAX-e)×48台設置し、建物の揺れに応じてダンパーのオイル流量を制御することにより地震の揺れを抑制します。
TMDとオイルダンパーの設置により、直下型地震から長周期地震動まで、地震の規模や特性にかかわらず制震効果を発揮します。
東日本大震災の長周期地震動に当てはめると揺れを半分以下に低減、揺れの時間も6分の1程度に抑えられるようです。
東日本大震災の時に、新宿副都心の超高層ビル群が長周期地震動で大きく長時間揺れ続ける映像が何度も流れました。他のビルへの応用も期待されます。
「新宿三井ビルディング」屋上の棟屋の両側に、超大型制震装置TMD(D3SKY)×6基設置します。
振り子式の1基300トンの錘(すい)×6基設置し、錘(すい)が揺れることで建物の振動エネルギーを吸収して地震の揺れを大幅に抑制します。
更に、低層階コア部に高性能オイルダンパー(HiDAX-e)×48台設置し、建物の揺れに応じてダンパーのオイル流量を制御することにより地震の揺れを抑制します。
「新宿センタービル」です。新宿副都心では「新宿三井ビルディング」に先立ち、大成建設が「新宿センタービル」に2008年10月~2009年7月の工期で、長周期地震動対策として「軸力制御オイルダンパー」を合計288台設置しています。東日本大震災でも効果を発揮しました。
大成建設(PDF)
新宿センタービルの耐震バリューアップ工事の内容
大成建設(PDF)
東北地方太平洋沖地震 新宿センタービルの観測結果と制振効果
写真では「ブレース」しか見えませんが、ブレースの下にオイルダンパーが設置されています。24層(15階~26階、28階~39階)×12台(各階)=288台の「軸力制御オイルダンパー」を設置しています。
この工法は、どの階にも設置でき、夜間のみの工事でなおかつ工期も短いです。施工中のテナントへの影響、眺望が一部阻害されることや有効床面積が減少する問題がありますが、この工法もどんどん導入して欲しいです。
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