世界貿易センタービルディング既存本館の解体工事 新開発の「鹿島スラッシュカット工法」で解体中 2022年7月下旬の解体状況
-鹿島スラッシュカット工法-
「鹿島建設」は、超高層ビルの新たな解体工法「鹿島スラッシュカット工法」を開発し、鹿島建設が施工中の世界貿易センタービルディング既存本館の解体工事に適用しています(写真提供SOCIO34050氏)。
「鹿島スラッシュカット工法」は、工期の短縮に加え、超高層ビルの解体工事に欠かせない強風・地震対策や第三者災害リスクの排除に寄与するとともに、騒音の大幅な低減や施工中のCO2排出量の削減など環境にもやさしい工法です。
1970年に東洋一高い建物として鹿島が施工した世界貿易センタービルディングは、最高高さ162mの超高層ビルで、解体される建物としては国内最高となります。解体工事に「鹿島スラッシュカット工法」 を適用することで、解体材等の風散・飛散など様々なリスクを低減しながら、工事を進めています。
引用資料 鹿島建設(2022/07/13)
国内最高!162mのビルを新開発の「鹿島スラッシュカット工法」で解体中 風散・飛散や騒音を大幅に低減し、世界貿易センタービルディング既存本館解体工事を本格化
超高層ビルの主要な解体工法としては、重機を最上階に乗せて解体する階上解体工法と建物をブロック状に解体して吊取っていくブロック解体工法があります。しかし、階上解体工法は解体ガラの落下リスクや最上部での粉塵の飛散、地上への荷下ろしが煩雑となるなどの問題があります。
また、ブロック解体工法は解体ガラの落下や粉塵の風散・飛散リスクは低減できるものの、切断されたスラブを吊下ろすまで支えておく仮設支保工の存置量が多くなるため、コストの増加や工事期間が長くなるといった問題がありました。これらの問題をクリアするため、仮設支保工の存置を必要としないブロック解体工法「鹿島スラッシュカット工法」を開発しました。
2022年7月下旬の解体状況です(写真提供SOCIO34050氏)。
「鹿島スラッシュカット工法」で解体工事を行っています(写真提供SOCIO34050氏)。
● 世界貿易センタービルディング既存本館・別館解体
解体工事の工事名は「世界貿易センタービルディング既存本館・別館解体」、解体工事の施工者は「鹿島建設」、解体工事の工期は2021年8月1日~2023年3月31日(予定)となっています。
南西側から見た様子です(写真提供SOCIO34050氏)。
「鹿島スラッシュカット工法のフロー図」です。
スラブを斜めに切断
鹿島スラッシュカット工法の施工フロー
(1) 密閉された建物内部で「斜め切断カッター」によりスラブを先行解体
(2) 躯体を切断して大割ブロック化
(3) 大割ブロックを建物内部の大型揚重開口より吊下ろし、地上階で小割解体
(4) せり下げ足場を逆クライミングし、次の下層フロアを解体
鹿島スラッシュカット工法の特徴
新たに開発した次の3つの技術を活用し工期を短縮
斜めにスラブを切断できる「斜め切断カッター」を開発しました。これにより、切断後から隣接するスラブが荷重を支えるため、階下にスラブの落下を防ぐ支保工を存置する必要がありません。そのため、先行して下層階の床解体に着手することが可能となり、工期短縮を実現します。
浜松町二丁目4地区
浜松町二丁目では、「世界貿易センタービル」の建て替えを含む「浜松町二丁目4地区」の再開発が計画されています。合計で6棟のビルが建設される巨大プロジェクトです。6棟中4棟が超高層ビルになります。
第一弾として、「B街区」に、地上29階、塔屋1階、地下3階、高さ155.04mの「日本生命浜松町クレアタワー」が、2018年8月31日に竣工しました。第二弾として、「A街区」に、地上39階、塔屋2階、地下3階、高さ197.321mの「世界貿易センタービルディング南館」が、2021年3月25日に竣工しました。
地上37階、塔屋2階、地下3階、高さ約200mで計画されていた「A-1棟」が、地上46階、塔屋2階、地下3階、高さ約235mに変更されました。階数で9階、高さで約35m高くなりました。A街区全体の延床面積も286,566.20㎡から約314,000㎡と大幅に拡大しています。
引用資料 世界貿易センタービルディング(PDF:2021/07/12)
「浜松町二丁目4地区」都市計画変更手続きの開始について
(仮称)浜松町二丁目4地区A街区全体の概要
◆ 計画名-(仮称)浜松町二丁目4地区A街区
◆ 交通-JR山手線・京浜東北線、東京モノレール「浜松町」駅、都営地下鉄大江戸線・浅草線「大門」駅
◆ 所在地-東京都港区浜松町二丁目5番22、37、48他
◆ 階数-(本館:A-1棟)地上46階、地下3階、(ターミナル:A-2棟)地上8階、地下3階、(南館:A-3棟)地上39階、地下3階、(モノレール棟)地上5階、地下0階
◆ 高さ-(本館:A-1棟)約235m、(ターミナル:A-2棟)約55m、(南館:A-3棟)197.321m、(モノレール棟)約35m
◆ 敷地面積-21,007.17㎡(A街区全体)
◆ 建築面積-約18,200㎡(A街区全体)
◆ 延床面積-約314,000㎡(A街区全体)
◆ 容積対象面積-約256,000㎡(A街区全体)
◆ 用途-オフィス、店舗、都市計画駐車場、モノレール駅舎、バスターミナル、カンファレンスセンター、医療センター、子育て支援施設、観光支援施設、DMO 活動施設、ホテル等
◆ 建築主-世界貿易センタービルディング、東京モノレール、JR東日本
◆ 設計者-日建設計、鹿島建設、トーニチコンサルタント、ジェイアール東日本建築設計事務所
◆ 着工-2017年09月07日(南館)
◆ 竣工-2029年度予定(A街区全体)
(備考) 「A-1棟、A-2棟」の設計者と施工者は「鹿島建設」、総延床面積約210,000㎡、着工は2022年5月予定、竣工は2027年2月予定です。
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