キヤノンが世界初の実用化 「ゲームチェンジャー」となる可能性を秘めた技術 「ナノインプリント」技術を活用した半導体露光措置を発売!
-キヤノン-
「キヤノン」は、は2004年からナノインプリント技術の研究を続けています。2009年以降は、ナノインプリント技術を用いた次世代半導体製造装置の量産を目指して大手半導体メーカーやアメリカの「Molecular Imprints(モレキュラーインプリント)」などと共同で開発してきました。
2014年4月には「Molecular Imprints」を完全子会社化し、社名を「Canon Nanotechnologies」に変更し、技術開発に取り組んでいました。キヤノンは、第一弾を2015年にも発売すると発表しましたが、あまりにも高度な技術のため、満足の行く性能に達せず、2023年まで発売が遅れました。
2004年から数えると20年近く経過しています。正に執念の技術開発です。正直言うと私は、「ナノインプリントリソグラフィ」の製品化は無理だろうと思っていました。
● FPA-1200NZ2Cを発売!
「キヤノン」は、半導体デバイスの製造で最も重要な回路パターンの転写を担うナノインプリント半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を2023年10月13日に発売しました。
これまでの投影露光技術とは異なる方式でパターンを形成するナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術を使用した半導体製造装置を市場投入することで、半導体製造装置のラインアップを拡充し、最先端から従来の半導体デバイスまでの幅広いユーザーのニーズに応えます。
引用資料 キヤノン(2023/10/13)
ナノインプリントリソグラフィ技術を使用した半導体製造装置を発売 シンプルな仕組みで微細な回路パターン形成を実現し幅広い半導体製造を実現
従来の投影露光装置は、ウエハー上に塗布されたレジスト(樹脂)に光を照射し回路を焼き付けるのに対し、新製品はウエハー上のレジストに回路パターンを刻み込んだマスク(型)をハンコのように押し付けて回路パターンを形成します。
光学系という介在物がないため、マスク上の微細な回路パターンを忠実にウエハー上に再現できます。そのため、複雑な2次元、3次元の回路パターンを1回のインプリントで形成することも可能で、CoO2の削減に貢献します。
キヤノンのNIL技術は、既存の最先端ロジック半導体製造レベルの5ナノノードにあたる最小線幅14nmのパターン形成ができます。さらに、マスクを改良することにより、2ナノノードにあたる最小線幅10nmレベルへの対応も期待されています。正に「ゲームチェンジャー」となる可能性を秘めた技術です。
「NILで形成した、半導体以外の 3次元立体微細構造の光学素子(光を当てると分光する素子)」です。
キヤノンの連結決算
「キヤノン」は成長企業のようなイメージがありますが、実は業績が長期に渡って低迷しています。過去最高の売上高4,481,346百万円、営業利益756,673百万円を記録したのは、リーマンショック前の2007年12月期連結決算です。それから15年以上経過していますが、未だに売上高・営業利益共にその時のレベルに到達していません。
リーマンショック前は、デジタル一眼レフカメラや複合機(コピー、FAX、スキャナー、プリンターなど)が好調で、キヤノンの業績の頂点でした。その後、スマホの普及でデジタルカメラの衰退、ペーパーレス化で複合機が衰退して、売上高3兆円台がずっと続いていました。再び売上高4兆円を突破したのは2022年12月期連結決算です。
● 存在感が出てきたたメディカル事業!
キヤノンの手をこまねいていた訳ではありません。苦境に陥っていた東芝グループから2016年(2016年12月19日に買収完了)に6,655億円で「東芝メディカルシステムズ(現:キヤノンメディカルシステムズ)」を買収しました。
「キヤノンメディカルシステムズ」は、「CT」や「MRI」などの医療機器関係では世界的メーカーとなっており、キヤノン全体の売り上げの約12%を占めるほどになっています。
キヤノンの連結決算(売上高/営業利益)
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1995年12月 2,165,626百万円 153,838百万円
1996年12月 2,558,227百万円 221,036百万円
1997年12月 2,761,025百万円 274,034百万円
1998年12月 2,826,269百万円 260,778百万円
1999年12月 2,622,265百万円 176,056百万円
2000年12月 2,781,303百万円 245,999百万円
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2001年12月 2,907,573百万円 281,839百万円
2002年12月 2,940,128百万円 346,359百万円
2003年12月 3,198,072百万円 454,424百万円
2004年12月 3,467,853百万円 543,793百万円
2005年12月 3,754,191百万円 583,043百万円
2006年12月 4,156,759百万円 707,033百万円
2007年12月 4,481,346百万円 756,673百万円
2008年12月 4,094,161百万円 496,074百万円
2009年12月 3,209,201百万円 217,055百万円
2010年12月 3,706,901百万円 387,552百万円
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2011年12月 3,557,433百万円 378,071百万円
2012年12月 3,479,788百万円 323,856百万円
2013年12月 3,731,380百万円 337,277百万円
2014年12月 3,727,252百万円 363,489百万円
2015年12月 3,800,271百万円 355,210百万円
2016年12月 3,401,487百万円 228,866百万円
2017年12月 4,080,015百万円 321,605百万円
2018年12月 3,951,937百万円 342,952百万円
2019年12月 3,593,299百万円 174,420百万円
2020年12月 3,160,243百万円 110,547百万円
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2021年12月 3,513,357百万円 281,918百万円
2022年12月 4,031,414百万円 353,399百万円
2023年12月期予想
2023年12月 4,220,000百万円 400,000百万円(会)
2023年12月 4,311,945百万円 403,405百万円(コ)
(備考) (会)は会社予想、(コ)はアナリスト予想(コンセンサス)です。コンセンサスは頻繁に変更されます。上記のコンセンサスは2023年10月26日時点の数値です。
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