
-新日本石油と新日鉱HDが経営統合-
国内石油元売り最大手の「ENEOS」ブランドの「新日本石油」と、6位の「JOMO」ブランドの「ジャパンエナジー」を傘下に持つ新日鉱ホールディングスは、2009年秋をめどに経営統合する方針を発表しました。国内ガソリンのシェア約33%との巨大企業が誕生する事になります。
空撮写真は、「新日本石油」の本社ビルがある港区「西新橋」周辺です。すぐ北側の「日比谷シティ」は千代田区になります。
世界的な金融危機による景気後退および日本国内の少子高齢化によるガソリンなど石油製品の需要が減る中で規模拡大によって経営基盤を安定させるのが狙いです。
「新日鉱HD」の傘下には、石油とは関連性のない銅精錬で国内首位の「日鉱金属」があり、経営統合後は、両社が持ち株会社を新たに設立し、傘下に石油精製・販売部門、石油開発部門、金属部門の3事業会社を置く形で行われます。
世界の順位(単位100万ドル:フォーチュン Global 500参照)
1位 372,824.0 エクソンモービル(アメリカ)
2位 355,782.0 ロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ・イギリス)
3位 291,438.0 BP(イギリス)
4位 210,783.0 シェブロン(アメリカ)
5位 187,279.5 トタル(フランス)
6位 178,558.0 コノコフィリップス(アメリカ)
7位 159,259.6 中国石油化工(シノペック:中国)
8位 129,798.3 中国石油天然気集団(ペトロチャイナ:中国)
9位 120,564.7 ENI(イタリア)
?位 127.564.5 新日本石油+新日鉱HD(1$=93.0円で換算)
?位 118.635.0 新日本石油+新日鉱HD(1$=100.0円で換算)
(ブルー)の上位6社が「スーパーメジャー」と呼ばれている
日本の順位(日経・会社情報参照)
1位 7兆5240億円 新日本石油
2位 4兆3395億円 新日鉱ホールディングス
3位 3兆8643億円 出光興産
4位 3兆5231億円 コスモ石油
5位 3兆0826億円 昭和シェル石油(ロイヤル・ダッチ・シェル系)
6位 3兆0498億円 東燃ゼネラル石油(エクソンモービル系)
7位 1兆9830億円 エクソンモービル(未上場・会社HP参照)
8位 1兆2030億円 国際石油開発帝石HD
テレビや新聞記事を見ると「世界8位の石油会社誕生!」と書いていますが、これは正確ではありません。
新聞によっては、日本の売上を不確定な2009年3月決算予想で、海外を2007年度で比較している場合もあるし、そもそもドルベースの売上比較になるので為替が円高に振れると日本企業の売上は見かけ上増えます。
上記のランキングはすべて2007年度で比較しました。為替は毎日変動しますが、ドルベースでは、イタリアの「ENI」はユーロ安で順位を下げ、中国の2社は元がドルとほぼ連動しているので、新会社は世界8位~9位が順当な順位と言えるでしょう。
-世界の石油業界の動き-
海外の石油業界は、国家戦略そのものなので見ていると国の考え方がよく分かります。私も高校生の時に「セブンシスターズ」という本を読んで、それが生々しくて面白かったのでそれ以来ずっと興味を持ってウォッチングしてきました。
世界の石油はアメリカの石油王「ジョン・D・ロックフェラー」が率いる「スタンダード石油」が独占禁止法で1911年に5月に34社に解体されてからは激烈な競争が始まります。
その後「セブンシスターズ」と呼ばれている米系の「エクソン」、「モービル」、「テキサコ」、「ソーカル」、「ガルフ」と英系の「BP」、蘭・英系「のロイヤル・ダッチ・シャル」の7社が世界を支配していました。
「エクソン」、「モービル」、「ソーカル」の3社は「スタンダード石油」が分割されて生まれた会社です。エクソンは「スタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー」、モービル「スタンダード・オイル・オブ・ニューヨーク」と呼ばれていた時期があり、ソーカルも正式社名は「スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア」で、「ソーカル:Socal」は頭文字を合わせたものです。
しかし1973年の第4次中東戦争での石油ショックの頃からOPEC(石油輸出国機構)の支配力が強くなり、1984年に「ガルフ」が「ソーカル」に救済買収さ れて「セブンシスターズ」の時代は終わりを告げます。
そして1990年代後半から 生き残りを賭けた合従連衡が始まり現在のような6社体制になりました。
★ 1984年03月 「ソーカル(スタンダード・オイル・オブ・カリフォルニア)」 が「ガルフ」を買収してブランド名の「シャブロン」に社名変更
★ 1987年03月 「BP」が「スタンダード・オイル(米:旧 ソハイオ)」の株を45%買い増して100%子会社化
★ 1998年12月 「BP」と「アモコ(旧:スタンダード・オイル・オブ・インディアナ)」が合併して「BPアモコ」に
★ 1999年03月 「トタル(旧:フランス石油)」と「ペトロフィナ(ベルギー)」が合併して「トタルフィナ」に
★ 1999年11月 「エクソン」と「モービル」が合併して「エクソンモービル」に
★ 2000年02月 「トタルフィナ」が「エルフアキテーヌ(仏)」を買収して「トタルフィナエルフ」に
★ 2000年04月 「BPアモコ」と「アルコ(アトランチック・リッチフィールド :アーコという呼び方も)」が合併して「BPアモコ」に
★ 2001年09月 「シェブロン」が「テキサコ」を買収して「シェブロンテキサコ」に
★ 2002年08月 「コノコ」と「フィリップス」が合併して「コノコフィリップス」に
このように世界でははるか前に再編が始まっていました。特にフランスは国策で強引とも思える方法で次々と合併させ、実質トタル1社にまとめました。
私はずっと前から「和製メジャー」を作る必要があると思っていました。極端な言い方をすると国際競争力の観点から株式の半数以上を日本の株主が持っている「民族系石油会社」は1社でいいと思っています。まあ独占禁止法で無理ですが・・・
しかし海外の石油メジャーはあまりに巨大で、もし日本の「民族系石油会社」がすべて統合してもとても歯が立ちません。
新会社は、売上でこそ「エクソンモービル」の3分の1になりますが、「エクソンモービル」の2007年度の利益は3兆7700億円(1$=93.0円換算)もあります。まさに像とアリくらいの差です。日本に競争力があった1980年代に統合させて、世界の石油採掘に参加していたら今と全く状況が違っていたと思います。