-JR西日本・JR東海-
1987年4月1日に、「国鉄」は115年の歴史に幕を閉じて分割・民営化されました。北から「JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州」そして「JR貨物」のJR7社が発足しました。「国鉄清算事業団」が約25兆円の借金を引き継ぎました。
経営が安定していた本州3社「JR東日本、JR東海、JR西日本」は株式上場を果たし、その後「JR九州」も株式上場を果たしています。それに比べて「JR北海道、JR四国」は地理的ハンディから苦しい状況が続いています。
2024年3月期の本州3社の売上高(営業利益)を比較すると、1位の「JR東日本」が売上高2,730,118百万円(営業利益345,161百万円)、2位の「JR東海」が売上高1,710,407百万円(営業利益607,381百万円)、3位の「JR西日本」が売上高1,635,023百万円(営業利益179,748百万円)となっています。
「JR東海」と「JR西日本」は、売上高がほぼ同じで推移しています。しかし、2024年3月期の営業利益は、「JR東海」が607,381百万円と営業利益6,000億円を超える超優良企業です。「JR西日本」の179,748百万円とは3倍以上の差があります。どうしてでしょうか?
西日本旅客鉄道(JR西日本)
「JR西日本(西日本旅客鉄道)」は、首都圏に圧倒的な在来線の鉄道網を持つ「JR東日本(東日本旅客鉄道)」や超高収益が約束されている東海道新幹線を持つ「JR東海(東海旅客鉄道)」と比べて鉄道が弱いので、多角化しないと収益を伸ばすのが難しいです。
2024年3月期連結決算では、売上高約1兆6350億円の内訳は、鉄道・バス・フェリーなどのモビリティ業9,864億円(約60%)、流通業約1,970億円(約12%)、不動産業約2,177億円(約13%)となっています。
その中で鉄道収入は約8,405億円です。内訳は新幹線約4,477億円(山陽新幹線+北陸新幹線)、在来線約3,928億円となっています。JR西日本の鉄道収入に占める新幹線の割合は約53%です。新幹線への依存度が割と低いJR西日本でも新幹線の存在感は際立っています。
ちなみに「JR東日本」の鉄道収入は約1兆6765億円です。内訳は新幹線約5,374億円、在来線約1兆1391億円となっています。関東圏の在来線は約1兆775億円、近畿圏の在来線は約2,942億円と絶望的な大差があります。こんな悪条件の中で頑張っているJR西日本は凄い!
● 積極的なM&Aにより不動産業が約13%と高い!
不動産業約2,177億円(約13%)と高くて驚かれると思いますが、積極的に「M&A(企業の合併や買収)」を行っているためです。その中で最大のものが、2017年2月1日に取得した「三菱重工業」の100%子会社「菱重プロパティーズ」です。取得価格は970億円でした。「菱重プロパティーズ」は、首都圏をはじめとして好立地の良質な賃貸物件を保有していました。
西日本旅客鉄道の連結決算(売上高/営業利益)
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1998年3月 1,229,137百万円 118,111百万円
1999年3月 1,205,078百万円 117,941百万円
2000年3月 1,191,009百万円 107,758百万円
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2001年3月 1,195,516百万円 111,877百万円
2002年3月 1,190,610百万円 117,649百万円
2003年3月 1,165,571百万円 122,636百万円
2004年3月 1,215,735百万円 126,930百万円
2005年3月 1,220,847百万円 133,100百万円
2006年3月 1,240,098百万円 135,218百万円
2007年3月 1,262,935百万円 135,341百万円
2008年3月 1,290,190百万円 137,413百万円
2009年3月 1,275,308百万円 122,519百万円
2010年3月 1,190,135百万円 76,530百万円
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2011年3月 1,213,506百万円 95,988百万円
2012年3月 1,287,679百万円 109,799百万円
2013年3月 1,298,913百万円 129,497百万円
2014年3月 1,331,019百万円 134,593百万円
2015年3月 1,350,336百万円 139,774百万円
2016年3月 1,451,300百万円 181,539百万円
2017年3月 1,441,411百万円 176,392百万円
2018年3月 1,500,445百万円 191,365百万円
2019年3月 1,529,308百万円 196,946百万円
2020年3月 1,508,201百万円 160,628百万円
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2021年3月 898,172百万円 △245,544百万円
2022年3月 1,031,103百万円 △119,091百万円
2023年3月 1,395,531百万円 83,970百万円
2024年3月 1,635,023百万円 179,748百万円
2025年3月予想
2025年3月 1,718,000百万円 170,000百万円(会)
2025年3月 1,750,725百万円 175,550百万円(コ)
(備考) (会)は会社予想、(コ)はアナリスト予想(コンセンサス)です。コンセンサスは頻繁に変更されます。上記のコンセンサスは2024年8月5日時点の数値です。
東海旅客鉄道(JR東海)
「東海道新幹線」を持つ「JR東海(東海旅客鉄道)」は、「東海道新幹線」の一本足打法となっています。「東海道新幹線」からの莫大な収益が約束されているからです。
2024年3月期連結決算では、売上高約1兆7104億円の内訳は、運輸業約1兆3915億円(約81%)、流通業約1,531億円(約9%)、不動産業約495億円(約3%)となっています。
流通業約1,531億円の多くの部分を「JR名古屋高島屋」が占めると思われます。「JR名古屋高島屋」の2024年3月期の売上高は約1,940億円です。流通業の売上高約1,531億円がJR名古屋高島屋より低いのは、約1,940億は売上高を単純に合計した数値だからです。会計上ではテナントの売上高の一部しかJR名古屋高島屋の売上高になりません。
● 全体の売上高の約73%が東海道新幹線!
鉄道収入内訳は、新幹線が約1兆2479億円+在来線が約948億円=約1兆3428億円となっています。鉄道収入に占める「新幹線」の割合は約93%です。JR東海の全売上高に占める「新幹線」の割合は約73%です。
「JR東海」は、「リニア中央新幹線」の建設に毎年莫大な金額を支払っていますが、経営が傾かないのは超ドル箱の「東海道新幹線」があるためです。「JR東海」が「JR東日本」のような斬新な新幹線車両を開発しないのは、冒険よりも「安全・安定・安心」を何よりも重視するためです。
東海旅客鉄道の連結決算(売上高/営業利益)
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2007年3月 1,146,245百万円 380,601百万円
2008年3月 1,147,112百万円 368,672百万円
2009年3月 1,234,269百万円 337,019百万円
2010年3月 1,221,629百万円 325,698百万円
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2011年3月 1,333,294百万円 335,949百万円
2012年3月 1,366,965百万円 370,475百万円
2013年3月 1,585,319百万円 426,142百万円
2014年3月 1,652,547百万円 494,612百万円
2015年3月 1,672,295百万円 506,598百万円
2016年3月 1,738,409百万円 578,677百万円
2017年3月 1,756,980百万円 619,564百万円
2018年3月 1,822,039百万円 662,023百万円
2019年3月 1,878,137百万円 709,775百万円
2020年3月 1,844,647百万円 656,163百万円
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2021年3月 823,517百万円 △184,751百万円
2022年3月 935,139百万円 1,708百万円
2023年3月 1,400,285百万円 374,503百万円
2024年3月 1,710,407百万円 607,381百万円
2025年3月予想
2025年3月 1,740,000百万円 608,000百万円(会)
2025年3月 1,767,667百万円 628,400百万円(コ)
(備考) (会)は会社予想、(コ)はアナリスト予想(コンセンサス)です。コンセンサスは頻繁に変更されます。上記のコンセンサスは2024年8月5日時点の数値です。