-グローバル拠点都市-
アメリカの「シリコンバレー」のようなベンチャー企業の活動拠点となる都市を整備するため、政府は、海外からの投資や人材の誘致などを促進する「グローバル拠点都市」に、東京、愛知、大阪、福岡を中心とする4つの都市圏を指定することになりました。
引用資料 NHK(2020/07/14)
日本版シリコンバレー目指しベンチャー拠点に4都市圏指定へ
グローバル拠点都市
◆ 東京都を中心に横浜市、茨城県つくば市などの近郊を加えた首都圏
◆ 愛知県と名古屋市、浜松市を合わせた中部地域
◆ 大阪市、京都市、神戸市の関西圏
◆ 福岡市
「グローバル拠点都市」に比べ規模は小さいものの、スマート農業や環境技術など特定分野のベンチャー企業の集積を目指す、札幌市、仙台市、広島県、北九州市を、「推進拠点都市」に指定することにしています。
「推進拠点都市」を含めると日本の大都市をほぼすべて指定しています。あくまでも私の感想ですが、こんな総花的な政策でとても効果があるとは思えません。でも何もしないよりはマシです。
政府は設立10年以内の未上場で企業価値10億ドル以上の「ユニコーン企業」を各都市で5社以上生み出し、これで得られた資金やノウハウを活用して2022年までにベンチャー企業への投資額を倍増、日本経済全体の成長につなげたい考えです。
「ユニコーン企業」は2018年2月末現在で、アメリカ151社、中国82社であるのに対し、日本は1社のみです。ベンチャー投資に関しても2017年のアメリカは約9.5兆円、中国約3.4兆円なのに対し、日本は1,976億円で、ヨーロッパの8,140億円にも及びません。
● アメリカと中国以外ではユニコーン企業の誕生は難しい
アメリカと中国以外では「ユニコーン企業」の誕生は極めて難しい状況になっています。なぜそうなるかというと「ユニコーン企業」の多くがIT企業だからです。IT企業は技術力を競う製造業と違って、参入するハードルが低く「アイデア×スピード×資金力×市場の大きさ」などで短期間で勝負が決まってしまいます。
アメリカは、熾烈な競争をしているシリコンバレーがあるので「アイデア」と「スピード」では世界を圧倒しています。資金力(多くのベンチャーキャピタル)、スタート時の市場の大きさ(アメリカ約3.3億人の人口+英語圏の人口)でも圧倒的に有利です。
中国はネットを外国に開放していないので、14億人を超える巨大市場が中国企業の独壇場になります。成功したアメリカ企業のアイデアを中国版にカスタマイズしてあっという間に「ユニコーン企業」が誕生します。
日本は、「アイデア×スピード」で頑張っても、乏しい資金力と日本語と言う小さい市場で、日本国内のローカル企業で終わってしまいます。「LINE」や「メルカリ」など見ても分かりますが、日本で大成功しても英語版のサービスを開始する頃には、すでに類似するアメリカ企業が市場を席巻していて入り込む余地がほとんどありません。
● シリコンバレー(Silicon Valley)
一番上の写真は、「シリコンバレー」の衛星写真です(Googleマップの衛星写真を引用)。「シリコンバレー」 は、サンフランシスコ・ベイエリアの南部に位置しているサンタクララバレーおよびその周辺地域の名称です。
具体的には、北は「サンマテオ」から南は「サンノゼ」までの複数の都市を指します。「サンフランシスコ」は厳密にはシリコンバレーに含みませんが、切っても切れない関係にあるので広義では含む場合が多いです。
「シリコンバレー」でどうして次々と「ユニコーン企業」が誕生するのかというと、「(1)新規上場により莫大な資金を手にした人や大手企業の技術者が独立して次々と起業する。(2)「スタンフォード大学」を筆頭に高度な教育環境が整っている。(3)「ベンチャーキャピタル」が潤沢な資金を提供する。」などの条件が整っているからです。
「シリコンバレー」でも、実際にはほとんどのスタートアップ企業が失敗します。成功するケースはほんの一握りです。そんな環境の中でも「ベンチャーキャピタル」は、金鉱を掘り当てるために果敢に投資をします。成功して新規上場すると莫大なリターンがあるからです。物凄く慎重に審査した上に、少額しか投資しない日本とは全く環境が違います。
● シリコンバレー の時価総額ランキング
世界の時価総額ランキングベスト50は、2020年6月末の時点で、アメリカ34社、中国7社、スイス3社、フランス2社、サウジアラビア1社、韓国1社、台湾1社、日本1社となっています。アメリカ34社の中で、アメリカ西海岸の企業が17社、その中でもシリコンバレーの企業が13社となっています。
下記の企業は、シリコンバレーの13社です。2020年7月10日終値時点の時価総額の順番に並べました。日本の企業と違って設立が新しいので驚かされます。これらの企業の中からも技術に自信がある者は、独立して次々と起業します。
1位 アップル(Apple)
「アップルコンピュータ」は、1976年4月1日に「スティーブ・ジョブズ、スティーブ・ウォズニアック、ロナルド・ウェイン」の3人によって、カリフォルニア州クパチーノで創業されました。2007年1月9日に「アップルコンピュータ」から「アップル」に改称しました。
営業利益63,930,000千ドルを1米ドル=107円で計算すると約6兆8400億円です。「パナソニック」の2020年3月期の売上高が7,490,601百万円なので、アップルの利益=パナソニックの売上高に近いという恐ろしい金額です。
アップル(Apple)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州クパチーノ市アップル・パーク・ウェイ1番地
◆ 設立-1976年04月01日
◆ 時価総額- 1,662,997,653千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-260,174,000千ドル(2019年09月期)
◆ 営業利益-63,930,000千ドル (2019年09月期)
2位 アルファベット(Alphabet)
「Google」は、1998年9月4日に「ラリー・ペイジ」と「セルゲイ・ブリン」によって創業されました。「Alphabet Inc.(アルファベット)」は、2015年にグループ企業の持株会社として設立されました。分かりやすくするために「Google」のロゴを引用しました。
アルファベット(Alphabet)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州 マウンテンビュー アンフィシアター パークウェイ 1600番(Googlel本社)
◆ 設立-1998年09月04日(Googlel設立)
◆ 時価総額-980,055.464千ドル(クラスAとクラスCの合計)
◆ 売上高-約1,619億ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-約342億ドル(2019年12月期)
3位 フェイスブック(Facebook)
「フェイスブック」は、2004年2月4日に「マーク・ザッカーバーグ」と「エドゥアルド・サベリン」によって創業しました。2012年4月9日に「Instagram」を10億ドルで買収しましたが、「Instagram」のその後の急成長を見ると先見の明がありました。
フェイスブック(Facebook)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州メンローパーク ハッカーウェイ1番
◆ 設立-2004年02月04日
◆ 時価総額-589,283,524千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-70,697,000千ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-23,986,000千ドル(2019年12月期)
4位 ビザ(Visa)
「ビザ(Visa)」の本社はニューヨークにあるようなイメージがありますが、サンフランシスコにあります。1958年に「バンク・オブ・アメリカ」が「BANK AMERICARD」を設立したことから始まり、1976年に「VISA(Value International Service Association)」に変更しました。そして2007年、世界各国の事業を統合する形で「Visa Inc」が誕生しました。
ビザ(Visa)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンフランシスコ 私書箱8999
◆ 設立-1958年
◆ 時価総額-324,853,500千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-20,609,000千ドル(2018年09月期)
◆ 営業利益-12,954,000千ドル(2018年09月期)
5位 テスラ(Tesla)
「テスラ」は、二次電池式電気自動車と電気自動車関連商品、ソーラーパネルや蓄電池等を開発・製造・販売している自動車会社です。創業者の「イーロン・マスク」は、民間宇宙ベンチャーの「スペースX」の創業者としても有名です。
「テスラ」の時価総額が「トヨタ自動車」を抜いて話題になっています。株価は将来への期待値とは言え、2019年12月期決算で、売上高がトヨタ自動車の10分の1以下、営業利益が赤字の企業が、「トヨタ自動車」を抜くのは明らかにバブルだと思いますが、株の世界ではよくある事です。
テスラ(Tesla)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州パロアルト
◆ 設立-2003年07月01日
◆ 時価総額-286,494,717千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-24,578,000千ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-△69,000千ドル(2019年12月期)
6位 エヌビディア(NVIDIA)
「エヌビディア」は、カリフォルニア州サンタクララにある半導体メーカーです。コンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とする「GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)」を開発し販売しています。最近、アメリアの半導体業界の盟主である「インテル(Intel)」を時価総額で上回り話題となりました。
企画設計と販売を行い、実際の製造はファウンダリーに外部委託するファブレスメーカーです。主なファウンダリーは台湾の「TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited)」です。
エヌビディア(NVIDIA)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンタクララ
◆ 設立-1993年04月
◆ 時価総額-257,789,550千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-10,918,000千ドル(2020年01月期)
◆ 営業利益-2,846,000千ドル(2020年01月期)
7位 インテル(Intel)
1991年に放送されたHNKスペシャル「電子立国日本の自叙伝」でも詳しく取り上げられていましたが、「フェアチャイルドセミコンダクター」を退職した「ロバート・ノイス」とムーアの法則で知られる「ゴードン・ムーア」が設立しました。3番目の社員として「アンドルー・グローヴ」が入社しました。
初代CEOは「ロバート・ノイス(1968年~1975年)」、2代目CEOは「ゴードン・ムーア(1975年~1987年)」、3代目CEOは「アンドルー・グローヴ(1987年~1998年)」が努めました。半導体に興味がある方は3人名前を知らない人はいないと思います。
インテル(Intel)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンタクララ ミッション・カレッジ・ブールヴァード 2200
◆ 設立-1968年07月18日
◆ 時価総額-252,050,020千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-71,965,000千ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-22,035,000千ドル(2019年12月期)
8位 ネットフリックス(Netflix)
「ネットフリックス」は、1997年8月29日に設立されたオンラインDVDレンタル及び定額制動画配信サービス運営会社です。本社はカリフォルニア州ロスガトスに置かれています。「FAANG(Facebook、Apple、Amazon.com、Netflix、Google」の1社です。
ネットフリックス(Netflix)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州ロスガトス
◆ 設立-1997年08月29日
◆ 時価総額-241,333,668千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-約201.6億ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-約26.0億ドル(2019年12月期)
9位 アドビ(Adobe)
「アドビ」は、1982年12月に設立されたカリフォルニア州サンノゼ市に本社を置くコンピュータ・ソフトウェア会社です。1987年に「Illustrator」を発表、1989年には「Photoshop」を発売しました。これらの2つのソフトと「Acrobat・PDF」は、パソコンの世界を大きく変えました。
アドビ(Adobe)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンノゼパークアベニュー345
◆ 設立-1982年12月
◆ 時価総額-223,619,934千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-11,171,297千ドル(2019年11月期)
◆ 営業利益-3,268,121千ドル(2019年11月期)
10位 ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings)
「ペイパル・ホールディングス」は、電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供する企業です。1998年12月に設立されました。
ペイパル・ホールディングス(PayPal Holdings)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンノゼ
◆ 設立-1998年12月
◆ 時価総額-209,438,328千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-17,772,000千ドル(2019年12月期)
◆ 営業利益-2,719,000千ドル(2019年12月期)
11位 シスコ・システムズ(Cisco Systems)
「シスコ・システムズ」は、カリフォルニア州サンノゼに本社を置く、世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社です。1984年12月10日に設立されました。
シスコ・システムズ(Cisco Systems)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州サンノゼ
◆ 設立-1984年12月10日
◆ 時価総額-197,012,341千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-51,904,000千ドル(2019年07月期)
◆ 営業利益-14,219,000千(2019年07月期)
12位 セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)
「セールスフォース・ドットコム」は、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業です。1999年3月8日に設立されました。本社の地上61階、高さ約326mの「セールスフォース・タワー」は、「サンフランシスコ」で最も高さが高い超高層ビルです。
日本の新オフィスとして、三井物産が本社移転のため退去した「日本生命丸の内ガーデンタワー」を一棟借りして「Salesforce Tower Tokyo」として2021年下半期にオープンすると発表しています。
セールスフォース・ドットコム(Salesforce.com)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州・サンフランシスコ
◆ 設立-1999年03月08日
◆ 時価総額-179,190,880千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-17,098,000千ドル(2020年01月期)
◆ 営業利益-297,000千ドル(2020年01月期)
13位 オラクル(Oracle)
「オラクル」は、データベース管理システム(DBMS)を中心とした企業向けソフトウェアの開発、販売を行っています。1977年6月16日に「ラリー・エリソン」により設立されました。
オラクル(Oracle)の企業情報
◆ 本社所在地-カリフォルニア州 レッドウッド・シティ
◆ 設立-1977年06月16日
◆ 時価総額-176,111,660千ドル(2020年7月10日終値時点)
◆ 売上高-39,068,000千ドル(2020年05月期)
◆ 営業利益-13,896,000千ドル(2020年05月期)